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22. 12SCと12SC搭載のref.570について

12SCと12SC搭載のref.570については、過去のコラムで書きましたが、今回はその後の調査でいくつか訂正点や新たな情報が加わりましたので、ちょっとご説明したいと思います。
さて、まずは12SCの製造数ですが、先のコラムでも書きましたように、パテックの資料では:
1. 828.812-828.835: 1938-1939 24個
2. 828.920-828.943: 1939 24個
3. 829.238-839.261: 1939-1940 10,024個
4. 861.704-864.995: 1939-1948 3,292個
5. 864.002-864.995: 1948-1950  994個
となっております。
まず、4の861.704-864.995ですが、これは862〜と863〜はいずれも13型のクロノグラフムーブメントが、該当するので、完全に除外して良さそうです。
一方、861〜は861.7〜861.9までのナンバーで12SCが見られるので、これは恐らく861.704-861.999の間違いと推測しております。従って、4は3,292個ではなく、296個と考えられます。
また、3の829.238-839.261は、830〜では前回のコラムでも書きましたように9-90型に使用され、12SCは見られないので、恐らく 829.238-829.261の間違いと推測されます。
従って、3は1,2と同様24個の2ダースのみの製造と言うのが正しそうです。
5については、864は864.0〜864.9〜まで万遍なく12SCの個体が見つかっているので、この数字は正しいと考えられます。
結果、1〜5の合計は1,358個になります。
一方、827〜並びに828〜で始まる12型には12-120と12SCが不規則に混在しております。
827.1〜、827.3〜、827.4〜、827.5〜、827.6〜、827.9〜で多数の12SCが見られるので、もしかしたら半数以上が12SCに該当するかもしれません。
また、828〜については、828.0〜と828.1〜並びに828.9〜で12SCが見られますが、こちらは恐らく100個強程度と推測しております。
従って、827と828を合わせた数字、約600個+αが上記1〜5に加わります。
そうすると、12SCの総製造数は恐らく2,000個前後と考えて差し支えないのではないでしょうか。
前回のコラムでは3,500〜4,000個と書きましたが、実際には上記の通り、その半数程度しか製造されていないと推測しております。
ちょっと数字の羅列で分かりにくかったかもしれませんが、いかがでしょうか?
12SCを搭載したモデルは、実際に、市場で目にする機会も極めて少ないですし、この製造数であればプレミアムで取引されても決して納得出来うるというわけです。
さて、話は変わって12SC搭載のref.570について。。。
57012sc++.jpgのサムネール画像
現在の調査では、以下の12SCのref.570が市場に出てきております。
左からムーブメント・ケース・メタル・ 特徴 になります。
861.771・301.832・YG・12,3,6,9 アラビック数字
861.787・301.833・YG・12,3,6,9 ローマン数字
861.833・301.831・YG・12,3,6,9 ローマン数字
861.893・647.721・SS・12,3,6,9 アラビック数字
864.181・———-・RG・12,3,6,9 アラビック数字
864.215・507.377・SS・12,3,6,9 ローマン数字
864.321・298.065・YG・12,3,6,9 アラビック数字 GUBELIN
864.341・626.954・SS・12,3,6,9 アラビック数字
864.410・298.329・RG・12,3,6,9 アラビック数字
864.459・299.027・YG・ブレゲ数字
864.493・———-・SS・12,3,6,9 ローマン数字 PATEK MUSEUM
864,592・299.627・YG・12,3,6,9 ローマン数字
864.607・299.632・YG・12,3,6,9 アラビック数字
864.613・299.635・RG・バトンインデックス
864.789・300.057・YG・12,3,6,9 アラビック数字 Black GUBELIN
864.828・300.068・RG・12,3,6,9 アラビック数字
———-・———-・ RG・12,3,6,9 アラビック数字
現時点では上記の17個の存在が判明しておりますが、内8個がイエローゴールド、5個がローズで4個がスティールとなっております。
ダイヤルは10個がアラビック、5個がローマンでブレゲとバトンが1個ずつとなります。
40年代のパテックのカタログを見てみると、ref.570の12SCはローマン数字の物が掲載されております。
570yg12sc.jpgのサムネール画像
希少性と言う観点から言うと、存在自体が少ないのでどれも希少価値は大ですが、中でもブラックダイヤルやブレゲインデックスの個体等は最たる物と言えるでしょう。
いずれの個体もインデックスは全体に比較して小さ目で、トータルデザインとしては、やや間延び感があると思われる方も居られると思います。
一方で、そのアンバランスさが現在のプロダクトデザインの感覚から言うと新鮮でもあり、そのバランスこそが、ある意味「12SCを搭載した570の個性」と言っても過言ではないでしょう。
上記リストのムーブメントナンバーが物語るように、12SCを搭載したref.570は861〜と864〜に集中しております。
実際に12SCの中でも初期の82から始まるムーブメントは殆どが96に使用されているようで、570を含めた他のリファレンスには後半の861〜及び864〜のムーブメントにのみ使用されているようです。
約2,000個の12SCですが、恐らく2/3程度の1,500-1,600個は96として使用され、それ以外のリファレンスが1/3程度、つまり500-600個程度が96以外のリファレンスに使用されたのではないかと推測しております。
30年代の後半から40年代後半までの約10年間しか製造されなかった12SCムーブメント。
既に製造から70-80年が経過して保存状態の良い物を見つけるのは困難ですが、オールドパテックのファンとしてはどのリファレンスであれ、一つはコレクションしておきたいアイテムではないでしょうか。