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COLUMN

16. ref.3448の世代について

今回は、永久カレンダーのref.3448の特に初期モデルに焦点をあてて説明していきたいと思います。
3448は1962年から1982年までの21年間に586個が製造されました。平均すると約28個/年の製造数ですが、どちらかと言うと1970年以降になって多く製造されるようになったため、当初の数年は10個弱/年程度の製造数であったと考えています。
また、このリファレンスの21年間の製造期間がいわゆるvintage世代からmodern世代にまたがっており、そのため、初期モデルに後年のオーバーホールの際に交換されたと思われる後期ダイヤルが入っていたり、もしくは初期の特徴であるPPクラウンが交換されたりしていても、世代間の判別がつきにくいため、特に指摘されずにオリジナルとして流通されているケースが良く見られます。
そこで、今回のコラムでは、この点を出来る限り明確にし、コレクターの皆さまが今後の購入される際のヒントになればと考えています。
それでは、まずref.3448のバ゙リエーションにはどのようなタイプが見られるかですが、以前より大別されているのは:
1. ロゴ並びに分表示がエナメルで描かれ、更にエナメルコーティングされた物
2. ロゴがプリントになり、分表示がパールドットインデックスになっている物
3. サファイアクリスタルが使用されベゼルが高くなった物。また、分表示はプリントミニッツインデックスになっている
に分けられると言われておりました。
しかし、実際には上記以外にもマイナーな特徴が見られますので、更に詳しく掘り下げ、ひとまず初期(もしくはアーリー)モデルについて特徴を以下にあげて行きますと:
1. ミニッツインデックスがエナメル表示
2. アワーインデックスが大きくて先の尖ったバトン状になっている
3. サブダイヤルのデイ表示の針がブルースティールである
4. ムーンフェイズ周囲のサイズが小さいデイ表示
5. PPクラウンが付属する
と言うポイントが見つかります。上記の特徴を具体的に画像で説明します。
左から先の尖った若干大きめのアワーインデックスとエナメルのミニッツインデックスにブルースティールハンドにサブダイヤルデイト表示、そして右がPPクラウン
3448details.jpg
尚、極めて初期の物でもゴールドのサブダイヤルハンドも見られますが、初期のカタログではブルースティールハンドが掲載されているものもあり、両方が存在していたのか、もしくはゴールドハンドが後年で交換された物かは定かではありません。
また、小さなフォントサイズのデイ表示も100個目以上の個体でも見られたり、パールドットのミニッツ表示が入った物でもロゴがエナメルで描かれている物もあり、エナメルダイヤルが初期物だけの特徴と言うわけではありません。
以上、上記特徴に沿って、3448の世代をまとめてみましょう。
第一世代: エナメル表示のロゴとミニッツ表示にPPクラウン、デイ表示は小さいフォント(1962〜1965年)、恐らく60個前後。
第二世代: エナメル表示のロゴとパールミニッツインデックスにPPクラウン、次いでカラトラバクラウン、デイ表示は小さいフォント(1966年〜68年頃)、120個前後。
第三世代: プリントロゴとパールミニッツインデックスにカラトラバクラウン、デイ表示は大きいフォント(1968年〜1978年)、300個前後
第四世代: プリントロゴとプリントミニッツ表示にカラトラバクラウン、デイ表示は大きいフォントでアワーインデックスも大きい、サファイアクリスタル(1978年〜1982年)、150個前後
のような流れになるのではないでしょうか。
それぞれの世代の特徴を画像で比較してみましょう。
1. 左から第一世代と第二世代3448-1&2.jpg
2. 左から第三世代と第四世代3448-3&4.jpg
以上、ref.3448の初期モデルの外見的な特徴から世代に分けてみましたが、参考までに第一世代モデルで当初の50個迄の内、手元にあるデータを以下に紹介します。
左からムーブメントナンバー・ケースナンバー・製造年・ケース素材・特徴となります。
1,119,000・ 311,093・ 1962・ YG・ エナメルダイヤル、PPクラウン、ブルースティールデイハンド
1,119,001・ 311,094・ 1962・ YG・ エナメルダイヤ、バトンハンズ、PPクラウン、ゴールドデイハンド
1,119,003・ 313,781・ 不明・ YG・ 後期交換ダイヤル、ラディウムハンズ、カラトラバクラウン
1,119,005・ 313,775・ 不明・ YG・ エナメルダイヤル、PPクラウン、ゴールドデイハンド
1,119,008・ 313,778・ 1964・ YG・ 後期交換ダイヤル、ラディウムハンズ、カラトラバクラウン
1,119,012・ 313,782・ 不明・ YG・ エナメルダイヤル、PPクラウン、ゴールドデイハンド
1,119,014・ 314,565・ 不明・ YG・ ムーンフェイズ無し、ドットミニッツ、カラトラバクラウン
1,119,017・ 314,568・ 1964・ YG・ ブレス一体型、ドットミニッツ、カラトラバクラウン
1,119,020・ 314,571・ 不明・ YG・ 不明
1,119,021・ 314,572・ 1964・ YG・ エナメルダイヤル、PPクラウン、ブルースティールデイハンド
1,119,022・ 314,573・ 1964・ YG・ 後期交換ダイヤル、カラトラバクラウン、ブルースティールデイハンド
1,119,024・   不明  ・ 1965・ YG・ エナメルダイヤル、PPクラウン、ブルースティールデイハンド
1,119,029・ 314,779・ 不明・ YG・ 後期交換ダイヤル、カラトラバクラウン
1,119,036・ 317,461・ 1966・ YG・ エナメルダイヤル、PPクラウン、ゴールドデイハンド
1,119,038・ 317,463・ 1965・ YG・ ブレス一体型、後期交換ルビーインデックス、カラトラバクラウン
1,119,040・ 317,476・ 不明・ WG・ エナメルダイヤル、ドットミニッツ、カラトラバクラウン
1,119,046・ 2,778,630・不明・ WG・ エナメルダイヤル、ドットミニッツ、PPクラウン
残念ながら、調査不足のため、極めて一部のデータしか手元に無いのですが、個数的には前述の通り最初の50〜60個が初期ダイヤルに該当するのではと考えております。
また、前述の通り後年のパテックによるオーバーホールの際にダイヤルやクラウンが交換されてしまっている物も多く、実際にダイヤルやパーツがオリジナルのコンディションを維持出来ているのは、その1/5程度と推測しています。
参考までに上記データの内のある後期交換ダイヤルの個体の画像を紹介します。
PP 3448 1119022.jpg
ご覧の通り、ダイヤルには後期第四世代に属する物が入っており、クラウンもカラトラバクラウンに付け替えられています。しかしながら、サブダイヤルの針はブルースティールがそのまま使用されており、オリジナルパーツと後期に交換されたパーツが入り組んでおります。このような個体が現在流通しているref.3448の中にもいくつも存在しており、このリファレンスの分かりにくさに拍車が掛かっています。
ref.3448は高額ですが、製造個数も少なく相場も比較的安定しています。
今後、もしこのリファレンスを手に入れる機会がございましたら、今回のコラムを参考にしていただき、上記どの世代に限らず出来る限りオリジナルコンディションを維持している個体を求められる事をお勧めいたします。