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COLUMN

20. ref.1526 永久カレンダーについて

久しぶりのコラムになりました。
今回は永久カレンダーのref.1526が入荷した事もありますので、そのref.1526について少し書いてみたいと思います。
ref.1526は、1941年から1952年までの12年間に210個が製造されております。
その内、12SCベースのセンターセコンドタイプが数個製造されたとする文献もありますが、現実的には市場には1個しか出てきておらず、恐らくはその1個のみしか製造されていないと言う説もあります。
筆者は後者を採用します。
残りのref.1526は12-120ムーブメントをベースに製造されたスモセコタイプになるわけですが、ref.1526以降の永久カレンダーがref.2497,ref.2438の27SCベースのセンターセコンドであったり、その後継のref.3448が秒針を持たないタイプである事から、ref.1526はVintage Patekでは唯一のスモセコ付永久カレンダーモデルで、ムーンフェイズの上を秒針が秒を刻んでいく姿は何とも言えずアストロノミックでとても魅力的であります。
さて、ref.1526のダイヤルデザインですが、いくつかのカスタムメイドモデルを除くと、サブダイヤルのデザインが異なる3タイプに分けられます。
1526subdial+.jpg
左から、最初期型とされる外側に秒メモリ、そして内側にDateサークルが配列されたタイプ。
このタイプの時計は2002年にAntiquorum社のオークションに出品されました。
他にもMartin Huber & Alan Banberyの本の283ページに同じ配列の個体が白黒画像で掲載されてあります。こちらの時計とオークションに出品された時計とはロゴが違うのでおそらく異なる個体だと考えられます。
続いて、真中の画像で外側にDateサークル、内側に秒メモリが配列され、それぞれが円のラインで区切られている(レイルウェイ)タイプ。
このタイプの個体は1944年頃までの数年間のみ製造され、製造数も恐らく30個前後と推測しております。
最後が右の画像の、配列は前のモデルと一緒で、内側の秒メモリが円のラインで区切られていないオープンになっているデザインのものです。
このタイプの物がref.1526の大半を占めることになります。
一方で、ref.1526には他のVintage Patekの時計には見られない少し変わった特徴があります。
それは、ロゴについてなのですが、他のVintage Patekがおおよそ1949年頃までロゴの表記が”PATEK, PHILIPPE & Co” となっているのに対して、ref.1526は1946〜47年頃の個体から”PATEK PHILIPPE”と言う表記になっている(一部1948年製造の物で”&Co”表記になっている個体もあります)と言う点です。
これは、他のrefと異なり製造個数が極めて少なかった事から、ダイヤルメーカーに対してPatekが、何らかの理由で”&Co”を除いた表記にするよう敢えて指示したものと推測しております。
もしかしたら、当時会社名から既に”&Co”が外されていることも理由の一つかもしれません。
さて、ref.1526にはカスタムメイドのタイプの物がいくつか存在すると前述しましたが、それらをいくつか挙げていきますと、例えば、サブダイヤルのクリスタルがルーペ状になっている個体や、モノクロームピンクに月・デイト表示部分のクリスタルがルーペ状になっている物:
1526rg.JPG
通常は奇数のインデックスはドットになっているのに対して、円錐形の大型のインデックスが入っている物:
145.jpg
また、秒針が無い個体もイエローで1本、ローズゴールドケースで2本存在が知られておりますし、ブラックダイヤルもアーカイブスには明記されておりませんが数個存在しております。
LOT-153-1024x663.jpg
この他、ダイヤモンドインデックス、蛍光仕様の物等いくつかカスタムダイヤルがありますが、何しろ当時20個/年弱しか製造されなかったリファレンスですから、それぞれの個体が注文したオーナーの特別な思いが表現された時計と言えるでしょう。
最後にケース素材別の製造数ですが、イエローが圧倒的に多く、ローズが50-60個程度、ホワイトとプラチナは無く、スティールが1個のみ存在しております。
現在では永久カレンダーの時計は、もちろん高価な時計ではありますが、各メーカーでも年間数千個は製造される時計でそれほど特別な時計では無いかもしれません。
しかし、1940-50年代当時は永久カレンダーモデルは極めて一部の顧客のみしか手に入れることのできなかった非常に特別な時計で、他のリファレンスにもまして210個の1個1個にそのオーナーの思いが詰め込まれた時計と言えるかもしれません。