02. ノーチラスの事について
ノーチラスはVINTAGE WATCHではないのではないかと言う声はあるかと思いますが、その議論はさておいて、個人的にはかなり気に入ったモデルです。
ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、ノーチラスはGerald Genta氏がデザインした時計です。1976年に初めてノーチラスが市場に投入されたのですが、当時ROLEXを初めとして、高級時計メーカーがスポーツモデルを続々と発表しており、Patek Philippeもその流れに乗って、それまでのどちらかと言うと繊細でエレガントなモデル中心から初めてスポーティーなモデルを発表しました。
私自身も昔はPatekというとやはり洗練されたデザインの時計ばかりに眼が行ってしまい、最近のクラウンガードのあるデザインのモデルやノーチラスなどは、どうしても好きになれなかったのですが、(クラウンガードのある時計はいまだにあんまり好きになれませんが)何故かノーチラスには興味を持つようになりました。
前にもコラムで書いたのですが、PatekのVintageはどうも腕につけるのが怖くて、実際に使用する頻度が減ってしまう(つまり実用的でない)というのは事実だと思います。そうすると、結局Patekを持っていても、実際にはめる時計はRolexばかりだったりして…。それじゃあ、「そんな事を気にしないで使用できる時計は」ってなるとノーチラスという事になるんですね。
文字盤のでこぼこ感がなにやら面白くてよい感じがしますし、潜水艦のノーチラス号をイメージした少々ハードなデザインも魅力的に思えます。希少性という意味では、市場では3700のステンレススチールのモデルに人気があるようで、最近急に価格が上がり始めました。オークション市場でもUS$30,000近辺で落札されたりもしてるようです。また、3800のピンクゴールドなどは、イタリア市場向けに10本だけ製造されたモデルで、非常に貴重なモデルです。市場でも3年ほど前に1本だけ出ましたが、その時はエスティメートをはるかにオーバーして落札されました。私は、3700も3800もどちらも所有していましたが、元々スポーティーで質実剛健なイメージを求めて開発された時計でもあり、その意味でも3700の方が「従来のコンセプト」が表現されており魅力があるように感じられます。
また、時計本体の「薄さ」も不思議な魅力があります。質実剛健なイメージからすると、ROLEXのようにもっと厚くても良いような気もしますが、実はそのアンバランスさも魅力につながっているような気もします。
1. JUMBO
通称JUMBOと呼ばれているモデルで、最初のリファレンスは3700/1で、1976年に販売がスタートしました。このモデルは直径38mm、秒針は無く、自動巻きの28-255Cというルクルトベースのムーブメントを採用しています。このモデルの第一世代はダイヤルの分刻みがバー状になっています。第二世代は最もポピュラーなモデルで、分刻みがバー状ではなく、ドット状になっています。ケース素材はスチール、イエローゴールドとスチールの組み合わせ、イエローゴールド、そして数は少ないのですがホワイトゴールドやプラチナでも製造されています。ホワイトゴールドのモデルは今年の春のAntiquorumのオークションでも出品されましたが、82,800スイスフランで落札されました(プレミアムを含む)。ダイヤルは、ややグレーがかったブラックダイヤルが通常ですが、ダークブルーのモデルも時々見られます。
3700/1はその後1982年に、ブレスレット幅が若干広くなった3700/11というモデルに替わりましたが、しばらくして販売停止となりました。その背景には、自社製造のムーブメントのみを使用するという会社の方針転換によるもののようです。その後、1998年になり、3700の後継もデルとして、センターセコンド及びパワーリザーブ表示のあるref.3710/1として復活され、続いてパワーリザーブ表示の無い3711/1、そしてコンプリケーションの3712/1というモデルも販売されました。
2. THE CLASSIC
ref.3800として1982年に発売されました。このモデルはセンターセコンドの自動巻き330scというムーブメントを搭載しています。JUMBOの3700と較べるとひとまわり小さく34mmの直径のモデルで、スチールとイエローゴールドモデルがありますが、以前はプラチナやゴールドとスチールの組み合わせのモデルも販売されていました。また、限定販売としてイタリア市場向けのピンクゴールドのモデルが10個のみ販売された事がありますが、このモデルはさすがに非常に希少で、殆ど市場にも出回ってきません。3年前に一度Antiquorumに出品されましたが、エスティメートを上回る39,100スイスフランで落札されました。
3. BOY-SIZED
ref.3900として1984年に発売されました。このモデルはクォーツムーブメントを搭載した31mmと3800を更に小さくしたいわゆるボーイズサイズのモデルです。今でこそ、大型腕時計が全盛ですが、80年代の初頭は南米やアジア市場向けとして開発された、男性用の比較的小型の腕時計の人気が高く、多くのメーカーが、このサイズの時計を発表したようです。Rolexのボーイズサイズとかがそれですね。
以上、男性用のノーチラスを中心に簡単にサイズ別に説明させていただきました。Patek初のスポーツモデルとしてベストセラーを続けたノーチラスもついに、発売中止となりました。ノーチラスのファンとしては、誠に残念で仕方ありませんが、後継モデルが近々発表されるともうわさされています。今度のモデルはどのような斬新なデザインになるのか、もしくはオーソドックスなデザインに戻るのか、非常に興味深いところです。
いずれにしても、特に3700は製造個数も比較的少なく、またそのデザインの斬新さからしても今後も市場では高値で取引されていくと思われます。しかしながら、スポーツモデルの宿命から程度の良いモデルは比較的少ないようです。また、3800も徐々に相場が上がってきました。プラチナのモデルや前述のピンクゴールドのモデルは是非とも手に入れておきたいモデルの一つと言えるでしょう。