EN JP
COLUMN

03. 初代オートマチックムーブメント、12-600ATについて (その1)

年末年始のバタバタや、時計の買付の準備等が重なり少々間が空いてしまい失礼しました。
今回はパテックの初代オートマチックムーブメントである12-600ATについて、すこし書いてみようかと思います。

12-600ATは、ご存知の通りコレクターの間で絶大なる人気を博すref.2526に搭載されているムーブメントで、日本でも非常に人気が高く、またムーブメントの詳細についての文献も多数見られます。従いまして、ここでは、いわゆるムーブメントの画像や機能の紹介ではなく、製造個数の謎や、リファレンスの紹介をさせていただこうかと思っています。

12-600ATはムーブメントナンバーとして760000から767099までの7,100個が製造されました。ちなみに、記念すべき第一号モデル(760000)は9年前にアンティコルムのオークションに出品され、US$57,500(バイヤーズプレミアム含む)で落札されています。もし、12-600ATをお持ちの方がいたら、ご自分の時計のムーブメントのナンバーをご覧いただければ、その時計が何個目に製造された12-600ATかすぐに分かります。

一方、この12-600ATを搭載しているリファレンスですが、前述の2526の他に、唯一のスクエアモデルである2540、丸型の2551と2552、そしてすこしナンバーが飛んで、小さめのラグの2583、細めで長く直線的なラグの2584、まだ市場には1個しか出回っていない2585(しかも12-600ATでは唯一のステンレスモデルです。この時計は3年前のクリスティーズのオークションに出品され、104,400スイスフラン(バイヤーズプレミアム含む)という高額で落札されました)。また、12-600ATで唯一のカラトラバモデルである3403、シンプルな形状の3415、そして、ダイヤモンドのベゼルがついた3421と3441の11モデルが製造されたようです。

それでは、トータルの7,100個の内、どのリファレンスが何個製造されたかですが、残念ながら明確な資料はございません。また、全てがケースインされたわけでは無いと思います。2526の製造個数については、従来から580個が製造され、そのうちイエローゴールドが480個、ピンクが50個、ホワイトが30個、そしてプラチナが20個と言われてきました。しかし、私はかねてより7,100個の内、一番市場に出回っている(もちろん人気があるから流通頻度が高いという事も言えるとは思いますが)2526が580個と言うのは少し少なすぎはしないだろうかと疑問におもっておりました。確かに2551や2552もそれなりに出回っていますが、他のリファレンスの市場への流通頻度は2526と比較してどれも非常に少なく、とても残りの6,500個ほどをカバーするほどの製造個数があったとは思えませんでした。

そこで、最近市場で言われている事ですが、2526は580個ではなく、実際にはどうも2,000個以上は製造されたというのが現実的な数字のようです。2551も1,000個以上、そして2552も同程度製造されたようです。そう考えると、この3つのリファレンスだけで5,000個程度が製造された事になり、市場へ出回っている頻度も考慮すると、概ね納得できるのかなと思われます。

また、オークションでの評価も2526については、ここ数年殆ど変化が無いのも、そういった事情が背景にあるのかもしれません。

だからといって、2526の評価が下がる物では全く無く、その類稀な美しさや仕上げの素晴らしさは、他の追随を許しませんし、特に初期のモデルのダイヤルはご存知の通り、ダイヤルに穴を開けてインデックスを埋め込んだりして、とても手間の掛かったモデルであることは言うまでもありません。特にパテックをお持ちの諸氏は決して投機で保有しているのでは無いでしょうから、仮に市場価格が上がらないからといって、一喜一憂する必要は無いと言えると思います。むしろ、コンディションの良い2526は流通度が増す事に年々見つかりにくくなってきておりますので、既に良いコンデョションの2526をお持ちの方は、これからも大切に保有していただければと思いますし、良いコンデョションの2526が市場に出てきたら是非お買い求めいただければとも思います。

さて、すこし、話がそれてしまいました。次回はすこし画像も交えてリファレンスのご紹介もさせていただきたいと思います。