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COLUMN

07. ref.3940永久カレンダーについて

最近のPatek Philippeの現行モデルのused品乃至は、正規ルート以外の時計の価格の高騰には驚かされます。ほんの数年前までは、現行モデルのused品や正規ルート以外の時計はどちらかと言うと中古品もしくは、正規ルートではない分リーズナブルな価格で流通しておりました。それが、最近ではむしろ正規価格よりもプレミアムがついたりしているケースが見られます。まあ、これには色々な事情があるようですが…。

さて、そんな市場動向の中、今回は、つい数年前に製造を終えました、大ベストセラーである3940永久カレンダーに焦点を向けてみたいと思います。

3940は1985年に自動巻きの永久カレンダームーブメント240Qを搭載して、3450の後継モデルとして登場しました。このモデルのムーブメントは770000が記念すべき第一号の時計ですが、最初の25本はスイスの有名な時計店であるChronometrie Beyerの225周年を記念してダイヤル上にナンバーの刻印がされています。特にNo.1は現在チューリッヒの時計博物館に展示されております。従って、一般市場に流通された時計は770025が最初という事になります。
Patekは、時に代理店の銘をダイヤル上に刻印する事はありますが、ナンバーがダイヤル上に刻印されているのは、この3940のBeyerモデルのみのようです。他の限定モデルは通常裏ケース上に刻印されるケースが殆どで、その事もこの3940のBeyerモデルの希少性を高めております。

さて、続いてケース形状について簡単に説明いたします。
ケース形状は基本的にはスタートから終売まで変化は無いのですが、裏蓋が年代によって異なります。まず、1985-1992年にかけては3940はイエロー、ピンク、ホワイト及びプラチナのモデルが製造されましたが、裏蓋は全てケースと同金属の物でした。当時は、サファイアクリスタルのスケルトンバックのモデルもございましたが、こちらは3941として販売されておりました。ちょうど、3970の販売当初と同じですね。
その後、スケルトンバックの要望が強いため、1993年から3970と同様にリファレンスを3940に統一してサファイアクリスタルと金属の二つの裏蓋が付属される事になりました。但し、プラチナモデルのみスケルトンバックのモデルは市販されなかったようです。
また、3945というケースとゴールドブレスレットが一体になったモデルもございます。こちらは、プラチナを除く他のゴールドのみ製造されました。一方、3940/1としてケースと一体ではないゴールドブレスレット付きのモデルも特注で製造されたようです。


さて、それではダイヤルのデザインの変遷について以下に説明させていただきます。3940は基本的には、三世代に分かれます。

まず、第一世代ですが、1985年から1987年の約二年間のみ製造されており、3世代の中では一番貴重なバージョンです。ムーブメントナンバーとしては、770000から770700まで(つまり700個)となります。
この世代のダイヤルの色はシルバーの物が通常ですが、シャンペーンダイヤル(ケースと同色の)も稀にございます。補助ダイヤルがそれぞれ3時位置と9時位置に有りますが、シルバーダイヤルの場合は、この補助ダイヤルが通常はシャンペーンカラーとなっております。
3時位置の補助ダイヤルはうるう年と月を表示しており、9時位置の補助ダイヤルは24時間と曜日を表示しています。ちなみに、24時間表示の補助ダイヤルは下半分の色が若干暗くなっておりますが、これは、上半分が昼、下半分が夜を意味しております。後期の2世代と比較すると、第一世代の補助ダイヤルは、明らかにくぼんでおり、またそれぞれ月と曜日の表示が補助ダイヤルの枠外に表示されており、その分直径が小さくなっております。 また色も明らかにダイヤルと異なるため、シンプルでまとまった印象を与えます。私個人的には、この第一世代のダイヤルが断然好みです。

写真左から、第一世代、第二世代、第三世代のダイヤル


続いて第二世代ですが、1987年から1989年に掛けて、ムーブメントナンバーとしては、770701から771500(つまり800個)前後が該当します。この世代の第一世代との違いは、3時と9時位置の補助ダイヤルのくぼみが浅くなり、直径が拡大されて月と曜日が補助ダイヤルの枠内に表示されるようになりました。 また、色もダイヤルと同系色となったため、補助ダイヤルの印象が、第一世代よりも薄くなっております。

最後に第三世代ですが、1989年以降、771500前後以降のムーブメントの3940は全てこのダイヤルが該当します。従って、この世代のダイヤルが一番多く存在します。この世代の特長は3時位置の補助ダイヤルがうるう年表示ごとに4等分されております。それ以外は、直径、色共に第二世代と同様です。

一方、ムーブメントですが、詳細は以下の通りです。

キャリバー 240Q
厚み 3.88mm
ムーブメント直径 27.50mm
ケース直径 35.20mm
jewels 27
Power reserve 38‐48時間
振動数 21,600(Hz)

ナンバーリングについては、前述の通り770000から776600及び、1998年頃より、3123900〜となっております。また、ムーブメントも240Qから240/114という名称に変更されています。

3940は既に製造を終え、ひとまわり大きい5140が後継モデルとして取って代わりました。
現在のトレンドと比較すると、少々小さくまた薄めのケースサイズは、若干クラシックな印象は与えますが、3940は実質20年以上も大きな変化も無く販売されたベストセラーです。これは一重に240Qがムーブメントとして優れていたことと、ダイヤルのデザインが、シンプルで極めて見やすく、且つケースサイズやデザインも洗練されていて、万人に受けやすい事などがその理由でしょう。


製造個数もかなり多い事は事実ですが、中でもシャンペーンダイヤルの物、もちろんBEYERモデル、そして3941等は製造個数も極めて少なく、非常に貴重なアイテムと言えるでしょう。
 特に、ケースサイズや重さの面でも普段使いでき得るコンプリケーションとしては、PATEKの製品の中ではダントツのモデルではないでしょうか?