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COLUMN

06. 永久カレンダームーンフェイズの3448と3450について

今回は、オークション市場で高騰を続けている永久カレンダームーンフェイズの3448と3450について少しお話しさせていただきたいと思います。

今でこそ、Patek Philippeはいくつものコンプリケーション腕時計を揃えておりますが、例えば手元にある1983年の同社のカタログを見てみますと(画像は添付データを使用してください)、コンプリケーションの腕時計は、わずかに3450しかリストされておりません。その後、同社は1985年に3940を、翌年に3970を発表し、1990年代後期になって複雑時計の需要が高まってくるといくつものコンプリケーションモデルを発表し現在に至っております。

当時は、複雑時計の需要が少なかった事が、現在のようにいくつものバリエーションを持っていなかった主な理由だと思いますが、その事からも複雑時計の希少性は、現在のそれとは比較にならないものであったであろう事は想像に難くありません。
当時の状況を知る由も無い私ですから、何とも言えませんが、永久カレンダーの時計を所持していたオーナーは、いったいどのような人々であったのか想像するだけでも、わくわくしてきます。

現在、これらの永久カレンダーモデルは確かに、高値にはなっていますが、お金を出せば手に入れることは出来ます。もちろん、永久カレンダーだけの話ではありませんが、入手する際には、その時計が見てきた歴史や前オーナーの愛着の度合いを十分考慮し、納得した上で取得していきたいと考えます。

さて、同社の永久カレンダー腕時計の歴史を見てみますと、3448より以前には、わずか3個だけ製造された3449と、それ以前の2497、2438そして1526と同社の代表的な永久カレンダーモデルの流れがございます。1526はご存知の通り非常にドレッシイなモデルで、続く2438と2497は防水機能を備えておりますので、1526と較べるとかなりごつくて男っぽい印象を受けます。3449は前述の通りわずか3個しか製造されませんでした。ムーヴメントは23-300Qというこの時計にだけ使用されたムーヴメントで、何らかの問題があったのだと想像しますが、何年に一度オークションに出品されたりしますが、その都度歴史的な価格で取引されています。

さて、それぞれの製造個数を見てみると3448は1962年から1982年までの間に586個が製造されております。また、3450は1981年から3940が製造を開始するまでの1985年までの4年間に244個が製造されたようです。
もともと自動巻きのムーヴメントであった27-460に永久カレンダーの機能を加えた27-460Qとして他社に先駆け、最初の自動巻き永久カレンダーとして発表された3448は、前述の通り約20年間に渡って製造されましたが、1982年に閏表示機能を持った後継モデルの3450にアップグレードされました。

3448の特徴を見てみると、ケース素材は圧倒的にイエローが多く、続いてホワイトは非常に稀で、プラチナにいたってはわずか2個しか製造されていないようです。また、ごく初期のモデルでPPクラウンが付いている物も稀に見られます(写真下左)。

基本的には、ミニッツインデックスはドットですが、ペイントバーインデックスの物も見られます。これは初期のモデルに多いようです。また、アワーインデックスがダイヤモンドになっている物も時には見られます。針はドルフィン型の物が通常ですが、中にはバトン型の物もございます。

また、非常に稀なモデルとしてムーンフェイズ表示の無い物も、ホワイトやイエローで数個見つかっております(写真下右)。恐らく、オーナーの特注により製造されたものだと思われます。このモデルは、通常のモデルの数倍の価格で取引されているケースが多いようです。1998年にAntiquorum社のオークションに出品されたモデルでプラチナケースにサファイアインデックスの物がありましたが、この時計は当時としては非常に高値の201,500スイスフランで落札されました。その美しさは類稀なものがございました。

また、ケースとブレスレットが同一素材で一体化された物もイエローとホワイトでございますが、通常モデルと較べると若干評価は下がるようです。

一方、3450は、3448とはダイヤルやケース形状は基本的には一緒ですが、前述の通り、ダイヤルの4時の所に閏年表示がある点が3448とは異なります。ケース形状やダイヤル等は特に製造年数による変化は無いのですが、唯一閏表示が、3パターン゛が見られます。写真下左から順に、初期のレッド表示、続いてアラビック数字による表示、そして一番製造数の多いのがローマン数字による表示となっています。圧倒的にレッドとアラビック表示の物が少なく、特にレッド表示のモデルは若干プレミアムがついているようです。

また、中には3450でありながら、閏表示の無いモデルもございます。これは、単に3448と3450の移行期間中のモデルでありますが、こちらも数が少ないため若干プレミアムがついております。

以上簡単に3448と3450について説明させていただきました。希少性という意味では、それ以前の1526や2438、2497の方がはるかに高いと思われますが、製造からさほど年数が経っていない事からして、特にケースやダイヤルのコンディションが良い物が多く、また、形状も大型ケースに小さなラグという少々アンバランスなデザインも魅力的ですし、コレクションの一つとしては、極めて賢明な選択であると考えます。