13. ref.2526
今回は、Vintage Patek Philippeの中で絶大な人気を誇る2526について書いてみようかと思います。
既に2526については雑誌上でも、ウェブ上でも、またブログでも様々な方々が色々な角度から紹介をされておりますので、特に新しい情報をご紹介できるわけではないかもしれませんが、ベーシックのおさらいと思って気軽に読んでいただければと思います。
まずは、製造個数からみていきましょう。
私の、初回のコラムで総製造個数について「2,000個以上製造されたでしょう」と書きましたが、その後のデータでは総製造個数は2750個で、内訳は2,300個がイエロー、370個がピンク、50個がプラチナ、そして30個がホワイトとなっております。この数字は概ね確かであろうと言うのが一般的な評価です。
それ以前は、総製造個数が580個で、内訳はそれぞれ、イエロー:480個、ピンク:50個、ホワイト:30個、プラチナ:20個と言われていましたので、かなり大幅に上方修正された事になります。また、特筆すべき点は、実はホワイトゴールドが最も少なかったと言う点でしょうか。12-600自体は7,100個製造されたので、その内約4割を2526が占めたと言う事になります(ちなみに、27-460を搭載した2526も存在しておりますので、比率はもう少し下がるかもしれません)。発売当初、2526はとても高価でしたが、その機能性や完成されたケースデザイン、そして文字盤の美しさ等から、かなり人気があった事は容易に想像できます。2526の販売期間は1953年から1960年ですので、平均すると年間350個程度が販売された計算になり、当時の高級時計としてはベストセラーだったと言っても過言ではないかもしれません。
次にケース形状を見ていきましょう。2526は基本的には2ピースからなりますが、初期の数十個のみ3ピースとなっております(画像1)。2ピースと並べて比較してみるとベゼルの張り具合に差がある事が分かりますが、単体でみてみるとあまり違いが分かりません。3ピースは当初使用されたのみですぐに2ピースに変更されている事から、恐らくは製造過程で3ピースよりも2ピースの方が作業性、操作性等の観点から優れていると言う評価だったのではないでしょうか。
画面1 |
裏ブタの形状はドーム型が初期、後期はフラットタイプと言われていますが、ごく初期のモデルにもフラットバックの物も見られるので一概に初期・後期を分けることは少し無理があるかもしれません。
ラグの形状も良く見ると個体毎に少しずつ異なります。前述の3ピースモデルのラグは後半のモデルと較べて若干細くてアールが少ないようでそのせいか上から見ると幾分長く見えたりします。しかし、同じ時期に作られたモデルでも若干違いが合ったりするようで、こちらも世代別に明確に分けることは出来ないかもしれません。
ムーブメントから考察してみると、12-600の初期の物がチラネジつきのモノメタル・テンプで、以降はジャイロマック・ステンプに代わります。760400台のムーブメントが既にジャイロマックス・テンプになっている事から、恐らく初期の300〜350個程度がチラネジ付きモノメタル・テンプと考えられます。また、前述のように一部27-460を搭載した2526も見受けられます。これは、1960年のref.3428への切り替えのタイミングによって、リファレンスを使い分けたに過ぎないと思いますが、希少である事には間違いありません。
続いてベルトをみてみましょう。レザーベルトとケースと同じ素材のメタルブレスレットがありますが、メタルの場合はブレスレットの形状からAからHとKの9種類の形状があると言われています。残念ながらまだ調査不足でA,C,D及びGタイプしか分かっていません。1955年のカタログに2526が載っているのですが、そこにはAとDタイプしか紹介されていません(画像2)。日本でコレクターの間でいわゆる「ホタテ」と呼ばれる形状のブレスはGタイプになります。
現在市場で皮ベルトが装着されている2526も元はメタルブレスが装着されているケースも結構あるようですし、またその逆のケースもあります。アーカイブスにはブレスレットの素材が記載されているので(タイプは記載されていません)、オリジナル性を判別する事ができます。また、元メタルブレスの物はラグの裏が若干当りでえぐれておりその点からも判別が可能です。
画面2 |
一方、ダイヤルはいわゆる「エクボ」と言われる、全ての文字盤に穴を開けてホールドするタイプの物が特に日本では人気が高いようです。但し、エクボダイヤルの有無も製造年で交錯するケースがあり、世代として明確に分けることは難しいようです。しかしながらエクボダイヤルは、一般的には最初の3年間(1953〜55年位まで)に集中しているように思われます。個数的には全体の1/3程度ではないでしょうか。画像だけでエクボダイヤルを見分けることは少し難しいかもしれませんが、エクボダイヤルの方が6時のインデックスが後期型の物より若干長いのが特徴です(画像3)。これは、前述の通りエクボダイヤルのインデックスは文字盤に穴を開けてホールドしていたため、ある程度の長さが必要だったのだと考えます。
画面3 |
一方、ロゴの字体も個体によって少し差があります。字の太さも異なりますが、個人的には”K”の字体の違いが、少し気になっています(画像4)。圧倒的に右のタイプの”K”の方が多いようですが、製造年代の違いではないようです。恐らくは職人さんの違いではないでしょうか?
画面4 |
続いて、当時2526の販売時に付属していたと思われるパンフレットを紹介します(画像5)。たまたま2種類保有していますが、ひとつは表紙にqpマークがエンボス加工されていて、言語はフランス語、またメタルブレス(Dタイプ)のイラストが描かれております。もう一方は、表紙に現行のジュネーブシールのロゴがエンボス加工され、言語は英語で、レザーブレスのイラストが描かれております。この事から、メタルブレスはフランス語圏の市場向け、レザーブレスは英語圏の市場向けの可能性があるかもしれません。
画面5 |
また、フランス語バージョンのパンフレットの一番最後に代理店名・購入日・ムーブメントナンバー・購入者名が手書きされています。但し、このパンフレットでは、selfwindingが消されて、ムーブメントナンバーが744.965となっています。このナンバーは12-600のナンバーに該当せず、10-200に該当しますので、代理店が別のモデルに使用したのだろうと思われます。当時は、あまりこう言った事もあまり頓着しなかったのでしょうね。
最後に筆者が把握しているホワイトゴールドとプラチナの2526の明細を下記いたします。
■ ホワイトゴールド(30個製造)
Movement No. |
Case No. |
Type of metal |
Dial |
762006 |
688728 |
WG |
enamel |
762008 |
688732 |
WG |
diamond |
762045 |
688736 |
WG |
enamel |
762046 |
688737 |
WG |
diamond |
762626 |
688745 |
WG |
diamond |
762700 |
688740 |
WG |
diamond |
763070 |
ー |
WG |
enamel |
763075 |
674843 |
WG |
diamond |
763099 |
694846 |
WG |
enamel |
763114 |
694847 |
WG |
diamond(12pt) |
763141 |
688743 |
WG |
diamond |
■ プラチナ(50個製造)
Movement No. |
Case No. |
Type of metal |
Dial |
760478 |
682227 |
PT |
enamel |
760498 |
682227 |
PT |
enamel |
760562 |
682226 |
PT |
diamond |
760970 |
684559 |
PT |
enamel |
760987 |
684561 |
PT |
enamel |
761042 |
684564 |
PT |
diamond (以前enamel) |
761412 |
687561 |
PT |
diamond |
761517 |
687557 |
PT |
diamond |
761518 |
687558 |
PT |
diamond |
761938 |
687957 |
PT |
diamond |
762000 |
687959 |
PT |
diamond |
763355 |
696055 |
PT |
diamond |
764506 |
ー |
PT |
diamond |
765735 |
687958 |
PT |
diamond |